M&Aが事業承継の身近な選択肢となった結果、中小企業のM&A実施件数は増加し、それに伴いM&Aを支援する事業者(以下、M&Aアドバイザー)の数も急激に増えています。一方で、M&A支援については、不動産業者とは異なり宅地建物取引業法のような M&Aアドバイザーを取り締まる法律がありません。

こうした背景もあり、M&A支援事業への参入障壁は低く、様々なプレイヤーが参入してきた結果、「会社を売りませんか?」「提携を検討している会社がありますが興味はないですか?」といった内容のDMやFAXの頻繁な送付や電話営業などの過度な営業行為によるトラブル(おそらく皆さんの会社にも上記の内容のDMが届いているのではないでしょうか?)や専門知識・経験の少ないM&Aアドバイザーによる交渉トラブルが散見されるようになりました。

そこで国は、令和3年8月に、M&Aアドバイザーに対する信頼度醸成や支援の質の確保のために、「M&A支援機関登録制度」(以下、本制度)を創設しました。国が、M&A支援に関する行動指針(中小M&Aガイドライン)を示し、その遵守宣言をすることが、本制度の登録要件となっています。

上述した通り、M&A支援業務に関する法律は存在しないため、本制度に登録をしなくても業務は制限されません。ただし、M&Aアドバイザーへ支払う手数料が対象となる補助金(※)に関しては、本制度の登録業者へ支払った手数料のみを補助対象とする、という制限がかけられています。

※事業承継・引き継ぎ補助金専門家活用型
2024年4月現在 第9次公募において、最大補助率2/3 補助上限額600万円以内

誰に支援を依頼するか決める際、実際に交渉がはじまってみないとサービスの質が分かりづらいという不安がある中で、本制度に登録しているかどうかは判断基準の一つになりますし、加えて、登録の有無だけではなく、例えば、本制度登録業者なら遵守しているはずの行動指針(ガイドライン)に従っているかを見極めることも、重要な判断基準になります。

ガイドラインの中でチェックポイントになりそうな点を下記に一部抜粋しますので、M&Aを進める際には、一度、依頼を検討しているアドバイザーから説明を受けることをオススメします。

【ガイドラインの一例】
◆営業の電話がしつこい等、過度な営業行為が行われていないか
◆M&Aアドバイザー契約において、重要事項説明書を用いて下記の明確な説明が行われているか
・サービス内容や手数料、関与形態(仲介または売手・買手片側のみの支援)
・顧客の行動を制限する条件(交渉相手との直接交渉制限や専属専任契約等)
・セカンドオピニオンを許容する契約になっているか
・いつでも契約を解除できる条件になっているかなど

中小企業庁では、本制度やガイドライン制定の他、M&Aアドバイザーとのトラブルに関する情報提供窓口も整備しています。中小企業が安心して M&Aに取り組めるように創設された制度ですので、是非活用されてください。

制度の詳細はこちら
https://ma-shienkikan.go.jp/